2026/02/20 01:30

皆様は聖書カバーを使われていますでしょうか。
「大切な聖書を守るためにカバーはつけておきたい!」
「思い切って革のカバーをつけてみようかな」
そう思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし一口に革のカバーといっても、実は様々な種類があります。今回はその中でも、最大の違いといっても過言でもない2種類の革について解説をします!
革は鞣し(なめし)によって変わる!

革の性質を大きく左右するのが「どのようにして鞣すか」ということです。なめしとは皮が腐ったりしないように、防腐処理をして耐久性を上げる工程のことです。
主なやり方は2種類あって「タンニン鞣し」か「クロム鞣し」です。この2つのうちどちらの方法で鞣すかによって、革の性質は大きく変わってきます。
ちなみにうちの製品はほぼ100%、タンニン鞣しの革を使っています。
世の中の製品の80%以上はクロム鞣し
クロム鞣しは塩基性硫酸クロムという薬品を使ってなめします。
クロム鞣しが開発されるまではタンニンという植物の渋みを使ってなめしていました。しかし近代になってクロム鞣しが発明されると、一気に広まり、今では革製品の80%以上がクロム鞣しだといわれています。
つまりもしお手元に何か革製品があれば、それはほぼ間違いなくクロム鞣しされた革ということです。
クロム鞣しが人気の理由は?
なぜクロム鞣しが取り入れられたかというと「①安価」で「②大量に鞣すことができる」からです。さらに「③防水性に優れ」ていて、「④傷もほとんど目立たない」という特徴もあります。市販品として売っていくにはこれ以上ないほど優れた特性を持っています。
そんないいとこずくめのクロム鞣しですが、欠点を上げるとすれば「①人によっては金属アレルギーを起こす」、「②(よくも悪くも)柔らかい質感になる」ということでしょうか。
またクロム鞣しの革は経年変化が起こりにくいです。色はもちろん、形状も。なので「自分だけの革にしたい!」「手になじむような革がいい!」という方にとってはデメリットになります。(逆に今の状態がいいという方にとってはメリットです)
あと私のような個人の作り手側からすると、クロム鞣しは使いにくい革になります。
革を裁断した断面のことを「コバ」といいますが、この後紹介するタンニン鞣しの場合、コバは磨くと光ってきれいになります。しかしクロムの場合、いくら磨いてもずボザボザとした繊維質のままです。
中~大規模の革製造工場だと、コバをきれいにする方法はいくらでもあるのですが、個人レベルだとなかなか難しい。というわけで個人で革製品を作っている工房の多くはクロム鞣し革を使っていません。
メリットもデメリットも豊富なタンニン鞣し

前述の理由で当工房ではタンニン鞣しの革を使っています。タンニン鞣しは植物の渋みの元であるタンニンを使ってなめします。ワインによく入っているあれです。
はるか昔、紀元前3000年くらいから使われている非常に歴史あるなめし方になります。
タンニン鞣しの最大の魅力は「①経年変化を起こす」ということでしょう。太陽や摩擦などによって徐々に色が変化します。ナチュラルな色の場合、橙色→薄ピンク→薄茶色→飴色と色が徐々に濃くなっていきます。
育てる楽しみがある革がタンニン鞣しの最大の魅力です。
また「②厚みがあって硬さがある」革も多いです。聖書カバーのような開けて、手に持って使うようなものの場合、硬さがある革のほうがいいという方もいらっしゃると思います。
ちなみにタンニンなめしでも柔らかい革はあります。↓のようなプルアップレザーはかなり柔らかいので手に持つとどうしてもたわみがあります。まあ別に使用上に支障があるわけではないので単なる好みの問題でしかないのですが。

一方でデメリットもあります。まず「①水に弱い」です。クロム鞣しは割と水をはじくのですが、タンニン鞣しの革は吸収します。そして水ジミになります(ケースバイケースですが、水で湿らして絞った布でぼかすようにしてポンポンとしてあげると、水ジミは消えることが多いです)。
そして「②傷もつきやすい」です。爪でひっかいてしまうだけでも傷になってしまうことも…。まあ歩んできた歴史が聖書カバーに刻まれていくと思えば、傷すらも味だと私は思います。そしてエイジングが進むについて徐々に目立たなくなったりもします。
また「③定期的なメンテナンス」も必要になります。できたら半年に1回はオイルをいれてほしいところです。乾燥してひび割れてくるのを防ぐためです。
とはいえ選択肢は少ない
ここまで革の性質を大きく変えるクロム鞣しとタンニン鞣しについて解説をしてきました。本来なら、「どちらか自分の好きなほうを選んで購入するようにしましょう」と言うところですが、聖書カバーの場合そうもいきません。というのも悲しいほど種類が少ないからです。
例えば新改訳聖書2017の聖書カバーの場合、2026年現在、公式サイトを含め、おそらくクロム鞣しの聖書カバーはほぼないと思います。
個人工房で作られている聖書カバーが多いからでしょう。
なので好むと好まざるとにかかわらずタンニン鞣しの聖書カバーを使うことになることが多いと思います。
うちの工房でも今のところクロム鞣しの製品は0(2026/02/20時点)。
タンニン鞣しの特徴をしっかりと理解したうえで購入すると、思っていたのと違った!という事態を避けられると思います。魅力もいっぱいあるなめし方なので、ぜひその良さも知っていただけると嬉しいです!
それではまた!(o|o)
